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Written by佐藤 徹平(satch)
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夏フェスに行こう。

夏フェスに行こう。

夏フェスに行こう。

夏、である。

 

この原稿を執筆している2022年7月は、梅雨入りから明けまでわずか14日間という史上最速記録を更新し、連日猛暑日を示している。

 

この季節、毎年音楽ファンたちの心を上気させるニュースと言えば「夏フェス」関連の報せであろう。今年は新型ウィルスの猛威もいくらか落ち着きを見せており、昨年までとはうって変わって大型の野外フェスが制限も緩やかに開催される見通しだ。

 

僕は毎年、各音楽フェスの出演者ラインナップをチェックするのをとても楽しみにしている。かといって気に入ったフェスに参加しようというためではなく、現行のアーティストたちの人気の度合いを確かめるバロメーターとして活用しているといった意味合いが強いため、実際にはすっかり夏フェスから足が遠のいてしまっているのだが……。

 

 

というわけで、今日は夏フェスの思い出について書いてみようと思う。

 

 

初めて夏フェスに行ったのは2004年のSUMMER SONICだった。もう18年も前ということに時の流れを感じてしまう。この年のヘッドライナーはGREEN DAYとBEASTIE BOYS。HIPHOPを心から愛する僕の目当てはもちろんBEASTIE BOYSだった。

 

今は亡きメンバーMC Aの姿を観れたことは心の財産だと思っているし、憧れのDJ MIX MASTER MIKEのプレイを目の当たりにしたその時の興奮は今でも鮮明に思い出すことができる。

 

大型のスタジアム会場の大音響で憧れのミュージシャンたちの演奏を聴いた感動が原動力となり、その後は何年か続けてSUMMER SONICに参加するのが夏の恒例行事となっていった。当時付き合っていた女性もロック好きで、一緒に出掛けること自体を小旅行気分で楽しんでいた青春の一幕……。

 

(深いため息)

 

ここまでキレイに書いておきながら、突然手のひらを返させてもらう。

フェスというのは、必ずしも美しい思い出だけで彩られるわけではない。

 

 

僕は誰かと一緒に夏フェスに参加するのが嫌だ。というと語弊があるが、正確には「僕がどんな風に楽しんでいても放っておいてくれる人」以外と一緒に行くのが嫌だ。

 

04年のSUMMER SONICはラップミュージシャンが数多く出演し、その中にはBEASTIEと並んで、超大物ラッパーのNASの名前もクレジットされていた。※2004年のSUMMER SONIC出演者ラインナップはこちら⇒

https://www.summersonic.com/history/2004.html

 

この機を逃すと次はいつNASの姿を観れるか本当に分からなかった。

冒頭では目当てはBEASTIE BOYSと書いていたが、訂正しよう。僕にとってはスタジアムの特大ステージでNASのライムを全身で浴びることが使命だった。

 

ステージにNASが現れる前、バックDJが往年のHIPHOPクラシック曲をスピン。

誇張抜きに、全て知っている曲だった。高まりが過ぎるあまり、まだ肝心のNASの姿が見えないにもかかわらず、全ての曲のHOOKを一緒に歌い、手のひらを太陽にかざしながら爆踊りする。会場は主役の登場を待ちわびて熱気の渦に包まれる。

 

ハズだった。

 

何千、何万という聴衆が集まっているというのに、僕のように全身で喜びを表現している人間は、ごくわずかしか見当たらなかった。

 

どういうことなのか。(NAS ⇒ BEAT CRUSADERS ⇒ BEASTIE BOYSという出演順に大きな「壁」を感じる。)

 

自分と会場の温度差に薄々気づく中、いよいよNASがステージに。

歴史的名盤と名高い1stアルバムの曲がパフォーマンスされる。これは嬉しすぎた。親の声よりも聴いたアノ曲たちがLIVEで展開されているのだ。拙い英語力ではあったが、知りうる限りのライムを一緒に歌い、全力で舞台上の生きる伝説の姿を追いかける。

 

燃え尽きた僕の両頬には涙の跡がうっすらと線を残していた。その時。

同行してくれていた彼女が、今にもその場に崩れ落ちそうな僕を見て驚きの声をあげた。

 

「え?泣いてるの?」

 

 

メガネのキモオタが、いままで見たことのない恍惚とした表情で涙を流しながらラッパーのステージに歓声を向け踊り狂う姿を見ていれば、それは当然の反応である。

 

 

実際のところ、会場にいた音楽ファンたちの多くはラップミュージシャンのステージを楽しむためのノリ方がいまいちわかっていない様子で、稀代のリリシストが全身全霊でライムする魂のパフォーマンスについていけていないように感じた。ステージ上のNAS自身、コール&レスポンスが思うように成立せず、はにかんだ笑顔を浮かべるシーンが何度かあった。NASのハードな音楽はヘッドライナーであるBEASTIE BOYSのようにド派手なキャッチーさを持ち合わせていないとはいえ、明らかにオーディエンスの反応は冷ややかだった。

 

 

身勝手ではあるが、そんな空気を感じてしまっていたところに語り掛けられた言葉が

 

 

「え?泣いてるの?」

 

 

である。

 

 

クソくらえ。泣いて何が悪いか。

 

 

今でこそ開き直ってそう思うが、実際は、とても恥ずかしかった。

 

それと同時に、申し訳なかった。一緒にライブを見てくれたからには彼女もそれなりに興味を持ってくれていたのだろうが。

NASがどれほどクールなラッパーであるか、往年の名曲を特盛にして日本のファンにサービスしようとしてくれていたか。そこに加えて(たまたまそう見えただけにしても)オーディエンスの反応がイマイチだったこと。涙を流しながら愛憎の入り混じった主張を早口でまくし立てるsatch青年。感動とヘイトの押し売り。

 

 

フェスの楽しみは、同じ日に何組ものアーティストを観ることができるというのはもちろんだが、自分の知らなかった新たな音楽の楽しみ方を知る絶好の機会でもある。

聴衆が同じ感動を共有できうる奇跡体験はなにものにも代えがたいだろう。

 

だからこそ、魅了される。

 

僕も毎年、各フェスの出演者ラインナップを見て、今年はまたフェスに行ってみようかな、という気持ちになるのだ。

 

そうだとしても、きっとひとりで行くんだろうな……。

 

 

だって暑苦しいもん。俺が。

 

佐藤 徹平(satch)

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