
僕がmodsになった頃の話

僕がmodsになった頃の話
いきなりだが僕は不良が嫌いだ。
過去に不良によってひどい目にあったり、仲のよい友達が不良にシメられたり、部員の不良行為が原因で全国大会への出場辞退をやむなくされたり…という経験はいっさい皆無なのだが、偏にその嫌悪感は「ルールを破る快感」に根ざした精神性や反抗的行為そのものへ向けたものではない
「なぜ不良ばかりがモテるのか」
という不条理へのやっかみが全てだった。
そこでひっそりと不良とは違う自己表現による小さい勝利のためその対象を探すことにした僕だったが…取り柄のない自分にできることといえば何か新しい趣味を見つけることくらいで、そう思い意図的に聴き始めたのがロックであり、そこで膨大な量のインプットを重ねる途中でファッションと音楽とが交差するカルチャーに心を奪われた
そこで出会ったのがModsだった
The Jamというバンドのボーカルであるポール・ウェラーに一目惚れしたことが全ての始まりだった。当時ロックンロールやパンクに持っていた粗暴でマッチョなイメージとは裏腹に、彼はスタイリッシュなスーツに身を包みステージに立っていた。そのある種パンクロックへの反抗的姿勢も含めて興味を持ち、調べれば調べるほど自分が求めていた「反抗の形」がそこにはあった。
そもそもModsというのは
60年代イギリスで発生し中流階級の若者を中心にファッション、音楽を動かしたムーブメント。一言で言ってしまえば
「イギリスのおしゃれ暴走族」である。
50年代後期イギリスでは当時のオートクチュール中心のファッションから既製品が主流となっていく転換期で、ジーンズが一般化され始めた時期だった。ロンドンや部の新興住宅地に住む若者は時代としてアルバイト代を家計に入れず自分のためだけに使うことができるようになった最初の世代でもあり、オシャレにお金を使える若者達はこのように考えた。
「オートクチュールな上流階級のファッションは機能性マジでカス。動きやすくてカッコいいスタイルを俺たちが提示してやるぜ…」
オシャレや愛好する音楽で周りに差をつけたい中流階級の若者たちの姿勢は、調べるほどに僕と重なって強い親近感を覚えた。調べるほど当時のModsの勢いは現代のオタクに通ずるものがあり、あり金全てをオシャレに注ぎ込み新しいオシャレを追い求めるModsガチ勢も少なくない。まさに現代ソシャゲにおける廃課金者さながらの猛進っぷりを見せていた。
僕がModsスタイルを好きな理由として衝動的ながら目的と機能性を考えて選ばれているという「オタクっぽさ」がある。
上品でスタイリッシュな3つボタンスーツに身を包み徒党を組んでクラブへ向かい、そこで異性にアピールするのがまず目的。で、向かうときにアメリカンバイクでは洋服が汚れやすいのでVespaやランブレッタといったスクーターに乗り、それを飾り付けることで個性を表現した(ここは暴走族っぽい)
そして一般にモッズコートと呼ばれるミリタリーコート(M51やM65)。モッズというとこのイメージが強いと思うんだけど…これはあくまでスクーターに乗るときに排気ガスでスーツが汚れないようにするためのもので、スクーターから降りるときには脱いでいた。
当時Mods達が愛した音楽も素敵。ロックンロールではなくR&Bやスウィングビート…いわゆるブリティッシュビートと呼ばれるこの当時トレンドのサウンドは今聴いてもグルーヴィで華やかで僕もとても好き。このコンピ盤も擦り切れるほど聴いた…
その後Modsはイギリスの経済危機やドラッグカルチャーなどの影響で衰退していくのだが、その後前述のThe Jamのポール・ウェラーが次世代モッズとして再びModsの反骨精神と探究心を世にアピールし、パンクの精神ともリンクしてブラックカルチャーなどを交えた新しいジャンルとなっていった。
僕はこの時代のもつハングリーさにとてつもない影響を受けModsになることを決意した。しかし学生だった僕には当時のmodsのような稼ぎは無い。父親が着なくなったツイードジャケットや地元の古着屋で数時間漁って1000円のトレンチコートを買ったり…当時の日本のファッションカルチャーはストリート系一色だったのもあって私服でネクタイやジャケットを着るような人はいなかったし、「お前なんでスーツ着てんのw?面接か?」とかいじられたりもした…
大学生になりアルバイト代を自由に使えるようになると、それこそmodsほどじゃないにしてもファッションにお金を使うようになった。東京にいるとUK古着を扱うお店もあり、実際に行ってよりmodsらしい服装をするようになっていった…懐かしい。
フレッドペリー、ベンシャーマン、GB SKINS、Merc、LONSDALE…
丁度2000年代中期ってUKロックのリバイバルスタイルな新人バンドがたくさんヒットした時代でもあってそこにもビシビシ繋がっていった。RazorlightやThe Libertines、Arctic MonkeysなどModsではないにしろイギリスにフレッシュな風が吹いていた。
結局僕は不良に勝てたんだろうか?
それとも別な不良になったんだろうか…流行への反抗というところだけ言えば同じだったんだろうか…
10年前くらいに色々な価値観の変動があって今はもうModsな服装をすることはほぼほぼ無いが、こうやって振り返るとModsの行動原理は「反発こそ目的」である不良というより「探究とアウトプットによる自己表現」であり、その点に現代のオタクとアニクラの関係に近しいものを感じたりする。オタクも不良もきっと何かに抗って自己表現するという意味ではやはり近いものがあって、自分の人生もやはりある種の不良なのかもしれないな〜なんて思ったり…
けどやっぱり不良は嫌い。
怖いんだもん