
リトルフォレストとプルドポーク

リトルフォレストとプルドポーク
突然だが僕は影響されやすい
基本は通ぶったスタンスを取っている僕だが
思い返せば映画や音楽、テレビやネットの番組から食事やファッションになんらかの影響が及ぶことがしばしばある。エルヴィス・コステロに憧れたら似たセルフレームのメガネを探したし、くるりの「ばらの花」を聴いた後はちゃんとジンジャーエールを飲みたくなるし、村上春樹の「風の歌を聴け」を読んだ時はビールが飲みたくなるし、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の野崎孝訳を読んだ後は文章がライ麦節になってしまう。
困っちまうよな。いつだって僕は、メディアに影響されて「こんなもんに影響されるのはかっこう悪いことだ」なんて言ってるのに、自分じゃあそうなっちまっているんだから。馬鹿げていることは知ってるよ。でも、ほんとうの僕ってのはそんなもんなんだ・・・
という具合に影響される
実際大学時代の僕は若気の至りからこの節回しを使用してブログを投稿したりしていた。
何度思い出しても恥ずかしい限りだ。
と前置きは長くなったが少し前の話
ある休日
妻と時間もあるので家で何か映画でも見ようかと話していた。僕と妻は映画の趣味がまるで違い、唯一の共通の趣味であるところの「料理」を題材にした作品を見ることが多い。これまでもジョン・ファヴローの「CHEF」やNetflixの料理関連の番組を見たりすることも多かった。そんなことを思いながら決めかねている僕をよそに妻が「久しぶりに見たい」と言ってある作品を流し始めた
リトル・フォレスト[2015]
五十嵐大介作の漫画が原作で春夏秋冬の4部作構成で描かれる、主人公が自給自足しながら暮らす姿を切り取った映画。主演は橋本愛、監督は森淳一、劇伴は宮内優里さん
内容としては
調理器具が幼少期から全然汚れたり焦げたりしていないところなど気になる点はあったが、田舎を美化する内容ではなく不自由さ、窮屈さ、孤独などもしっかりとリアルに感じさせてくれたので結構好きだった。主人公が自給自足から作る料理がどれも魅力的で好感を持った。特に印象的だったのは稲作、合鴨農法の後、繁殖により増えた鴨を食材として一からさばいてあく工程を描いているシーンで、そこで作られた鴨料理はとても美味しそうだった。
影響されやすい僕はすぐに鴨料理が食べたくなった。
鴨南蛮そばと鴨出汁おにぎり
作中の料理とは全然違うメニューだがまあいい。
そしてまた少し日が経った頃
休日に妻と何か見るかという話になり、御多分に漏れずNetflixで料理系の番組を見ることにした。この場合映画である必要は無いのでバラエティ性のある番組なら片手間にスマホでもいじりながら見られて、途中でうとうとすることへの罪悪感も薄いだろうと思い適当に流し始めた。
アメリカンバーベキュー最強決戦
8人の腕自慢のバーベキューの達人たちの中から最強を決めるべく、毎話脱落枠をかけて課題の料理を披露していく番組。
本来必要な時間からかなり短い時間設定と品数、
必須食材がプレイヤー未履修の食材だったり
スパルタな上に審査員がそれに対して厳しくコメントする理不尽さとそれを乗り越えてとてもおいしそうな料理を披露する姿に心底興奮した。
「血液型はバーベキューソースだ」
「肉の統合失調症?」
「俺が焼けば歯はいらない」
「焦げたくらいであきらめさせない。俺が手伝う」
などのパワーワードが飛び交うのも魅力の一つだ。
前述のとおり見終わったあと同じ流れでこれにも影響を受けた僕だった。
とはいえバーベキュー料理はどれも場所と時間に制限がある料理が多いしキャンプの機会でもないとな・・・などと考えているうちに地元新潟は雪景色に包まれた。
バーベキュー料理への思いをはせるも忙しさと天候ですっかり影響からくるモチベーションは削がれていった。
そして先日。
電車の車窓から眺めた地元は相変わらず雪に包まれていた。雪に埋め尽くされた町を見ているといささか郷愁を感じ、先日観たリトル・フォレストのあの村と重なってなんとなく浸りたくなってくる…僕はちょうど当時リリースされた宮内優里さんの新譜をおもむろに聴き始めた。
間の使い方が今の気分とマッチして気持ちよい。キャッチーさに溢れるこれまでの作品よりとても好きなアルバム。
そんな流れで「家に帰ったら何か料理でもしようか…」などとぼんやり考えていると、なんのスイッチが入ったのか近い時期に妻と見た真逆ながら影響色濃いバーベキュー料理を食べたくなった。時間を見つけて何か料理したいなあなどと一人考え込む。バーベキュー料理で自宅でもマネできるものはないかな・・・と考えた
プルドポークなら圧力鍋で近い雰囲気のものが作れるかも
一瞬でその気になった。
思ったら速い。
帰宅するとすぐに下準備を始めた。
帰宅途中のスーパーは品数も少なく肩ロースのブロックは品切れしてヒレ肉のブロックを購入。少しタンパクだがいいだろう。
ヒレ肉塊にマスタード、ニンニク、塩コショウ、パプリカとクミンとチリパウダーを塗り込み一日馴染ませていく。翌日帰ってくると圧力鍋に玉ねぎとセロリを敷いてその上に寝かせていたヒレ肉を置き、バーベキューソースのベースをいれていく。バーベキューソースの元はケチャップや市販のソースに醤油やスパイス、リンゴ酢やクラフトコーラなどを適当に混ぜ込んだやつだ。
本場アメリカではこの状態の肉をスモーカーで4~6時間燻製して作るのだが、今回は圧力鍋で似たようなものを作っていく。
2時間くらい弱中火くらいで加圧して終了。
取り出すとこんな感じだ
ホロホロに仕上がっている…うまそうだ。
そしてそれをフォークで割いていく
この割いていく工程をしてプルドポークと呼ぶ。
全部ほろほろにほぐすことができたらバーベキューソースと混ぜる。
圧力鍋に残った食材を煮詰めて溶け切らない野菜はバーミックスで撹拌して塩や砂糖で味を調えたらバーベキューソースの完成。
これをほぐしたほろほろ豚に混ぜていく。
プルドポークの完成だ。
こんな感じでバーガーにしていただいた。
僕は影響されやすい。
それぞれの文化を同じ媒体で全く別のカタチで楽しむ。そして変なチャネリングが起こってスイッチが入りそれを再現するという文化の楽しみ方も悪くないなって思う。
また気が向いたら料理でもしよう。