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Written by原田 透子
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『てかミールス知ってる?』

『てかミールス知ってる?』

『てかミールス知ってる?』

 

“ミールス”という食べ物がある。

主に南インド地方で食されており、ターリーと呼ばれるステンレスの大皿の上にさまざまなおかずが乗った、いわばインドの定食のようなものだ。

これらのおかずを豪快に混ぜ、ごはんと一緒にいただく。

(本場インドではバナナの葉の上にのせて食べるらしい。)

 

わたしは2年ほど前に初めてミールスを食して以来完全にとりこになり、暇さえあればミールスを食べ歩く妖怪ミールスババアになり果てたわけなんだけれど、近頃同じくインド料理のビリヤニが話題沸騰しているのに対し、こちらはまだまだ知名度が低い。

 

ならば書こう。

そういう次第である。

 

さて、インドと言えばまずカレーを連想するだろうが、ミールスにも例に漏れずカレーが含まれている。

ところがこの南インドのカレーは、我々がインドカレーと聞いて思い浮かべるものとは少しばかり違うのである。

 

▼まず南インドについて。

南インドというのはこのあたりで、文字通りインドの南側だ。

 

ちなみに、インド南西部に位置するゴア地方も地理的には南インドなのだけれど、このあたりの食事にはポルトガルの文化が流れ込んでいるようで、南インド料理とは少々趣が違う。

 

たとえば宗教上の禁忌である豚肉やニンニクをワインビネガーで煮た、厳格なヒンドゥー教徒が聞いたら卒倒しそうな「ポークビンダルー」というカレー料理は、ゴア地方の有名な伝統料理だ。

自分で作ろうとするとかなりの手間がかかる代物なのだけれど、そういうものほど死ぬほどおいしい。

 

これは16世紀から20世紀までに及ぶ長い間、ゴア地方がポルトガル領であったことに起因する。

そういうわけで一口にカレーと言っても、地域によって食事の様子にさまざまな特徴があるのだ。

 

で、じゃあイメージするインドカレーと南インドカレーはどう違うのか。

 

ざっくり説明すると、北インド地方のカレーがドロッと濃厚でナンなどの小麦を主食にいただくものであるのに対し、南インドのカレーはサラっとしていて脂が少なく、主食は米だ。

というのも南インドは年間を通して高温多湿な湿潤熱帯気候であり、とにかくジメジメ熱くて「脂ぎった食事など食っていられるか!」というわけなのである。

 

……かどうかは定かではないものの、とにかく熱いなかでもサラッと食べやすいよう、脂の少ないスープのようなカレーを、パラパラした食感のインディカ米とともにいただくんだそうだ。

 

また南インドの食事は、肉魚よりも「ベジ(菜食)」が基本であるのも特徴で、ミールスのおかずも豆や野菜が使われたものが多い。

 

もちろん、ミールスを提供しているお店に行くとお肉や魚を使ったカレーを出してくれるところもあるけれど、こういったものは超特別プレミアムカレー的な立ち位置なんだという。

 

▼ミールスの全貌

 

“ミールス”ではたいてい、このようなものが提供される。

 

1・・サンバル

豆と野菜のスープ。南インドのみそ汁的存在で、ミールスにはたいていついてくる。

 

2・・ラッサム

トマトと、タマリンドという酸味のある果物を用いた酸っぱ辛いスープ。

ミールスにはたいていついてくる。

 

3・・ダール

豆のスープ。

 

4・・パパド

豆の粉からできたお煎餅。塩味がある。

そのまま食べてもいいし、砕いてふりかけのようにしてもいい。

 

5・・ポリヤル

野菜のスパイス炒め。

 

6・・アチャール

インドのピクルス。

 

7・・インディカ米

細長くて、水分が少なくパラッとしたお米。

南インド料理特有の汁っぽい料理の味をよく吸う。

日本のお店ではたいていバスマティライスという高級な香り米が出てくる。と思う。

 

これらのほかにメインのカレーがつき、また「ロティ」というインドのパンや「ワダ」という豆のドーナツが乗っていたり、「チャトニ(チャツネ)」と呼ばれるペースト状の調味料やヨーグルト(カード)がついていたりすることも多くある。

 

当然ながらこれ以外のかたちで提供されたり、これら以外のものが乗っていたりすることも珍しくない。

日本の定食における自由度と同じで、米とみそ汁のついていない定食はまずないが、それ以外のおかずの内容に関してはまちまちであるのと似ている。

 

このようなおかずを、はじめは単体で、それから少しずつ混ぜていき、最後には全て混ぜて、味の変化を楽しみながらいただくのが“ミールス”なのだ。

 

▼わたしが食べたミールス自慢

 

ここからは、わたしが食べに行ったランチミールスについて少しばかり紹介したいと思う。

 

1.とら屋食堂(西荻窪)

西荻の路地裏にたたずむ雰囲気のあるお店。

 

わたしが人生で初めて食べたミールス。

肉・魚を使わない完全菜食のミールスで、経験したことのない香りと味に目を白黒させながら食べた記憶がある。

 

こちらのお店ではダールがお米の上にかかったスタイルで提供され、そこへ小皿(カトリ)に入ったおかずを混ぜていっていただくスタイル。

 

写真左下の白いのはココナッツチャトニで、わたしはこれがあるととっても嬉しくなる。

 

2.大岩食堂(西荻窪)

こちらも西荻。さすがカレーの街。

ガード下にお店をかまえる、いつも人でにぎわう人気店だ。

 

こちらのミールスにはサラダがついていて、さっぱりと口直しができるのが特徴。

このお店で印象的だったのはラッサムがめちゃくちゃおいしかったこと。

 

スパイスの味とタマリンドの酸味でなかなか複雑な味のラッサムだけれど、大岩食堂さんのものは口当たりがやさしく、かつあの独特の風味を殺していない絶妙な味だった。

いくらでも飲める。

 

3.ERICK SOUTH MASALA DINER(渋谷)

日本に南インド料理を広めた立役者エリックサウスの分店。

高円寺にも、「高円寺カレー&ビリヤニセンター」の店舗があるのでぜひチェックしていただきたい。

 

こちらのお店のランチミールスは、選べるカレーの種類が豊富なのがポイントだ。

先述したポークビンダルーや、ラムカレーやチキンカレーなどお肉のカレーをいただくこともできる。

 

四つ折りになったロティが添えられていて、お米と小麦の両方が楽しめるのもうれしい。

そしてやはり、ココナッツチャトニが付いておりわたしはうれしい。

 

4.Spice Kitchen MOONA(下北沢)

個人的な優勝店はココ。

ランチタイムのフィッシュカレー定食がイチオシで、内容は日替わりなのだけれどこれがいつ食べに行ってもすべておいしいときている。

魚介系カレーでここ以上においしいところを今のところ知らない。

 

下北沢へ行くと、ここでしかご飯を食べられなくなった。

 

なかでも牡蠣カレーが絶品で、これをやっているときは毎日でも食べに行きたくなるほどだ。

フィッシュカレー定食についてくるエビのピクルも最高であり、大きな瓶いっぱいに食べたい。

 

5.あたしんちのミールス(練馬)

なにをシレッと並べているんだという感じだが、これはわたしの手製ミールス。

あまりにおいしく、そして楽しいのでどうにか家で作れやしないかと試行錯誤し、作った。

 

・サンバル

・ラッサム

・サバのコランブ

・キャベツのポリヤル

・玉ねぎのアチャール

・トマトチャトニ

・チキンピクル

・バスマティライス

 

というメニューだ。

どう?おいしそうでしょう。

しばらく家がインドの香りになったのはご愛敬。

 

▼インドにカレーという食べ物はないらしい

 

インドといえばカレーでしょ、と散々カレーの話をしてきたが、そもそもインドに「カレー」というメニューはないらしい。

 

というより、スパイスで風味づけされた煮込み料理の総称を「カレー」と言い、わたしがこの記事のなかで出した「ビンダルー」や「コランブ」といった料理も、総じてカレーなのだ。

 

わたしたちがカレーとひとくくりにしているそれぞれに、きちんと名前があるのである。

ちなみに現地に方々からすると「カレー」って言葉は“自国の料理に対し外国のひとが使う言葉”といった感じの認識になるんだという。

 

深いな、カレー。

 

より掘り下げるにはやはりシルクロードをガンダーラするべきなのだろうけれど、日本にいたままでもこれだけおいしいカレーを食べることができるのはうれしい。

それも、まだ認知度の低い南インド料理をハイスペックな味で楽しめるのはひとえに「日本にもこの味を」と考え必死で流入を促してくれた先駆者たちの行動力に他ならない。

 

そりゃあレシピ本も買うというものである。

 

北インドカレーに比べまだまだ知られていない南インドカレー、ぜひこの機会に食べてみてはいかがだろうか。

本当に全部混ぜて大丈夫なんだろうか、というくらいさまざまな味のおかずが乗ったミールスの、あの全てが個性的でありながら混ざり合ってもぱちりとピースのハマったような味をぜひ体感してもらいたい。

 

原田 透子

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