
Big Thiefと帰省ガール

Big Thiefと帰省ガール
突然だが久しぶりに新品レコードを購入した。
基本サブスクリプションで音楽を聴くようになって早何年…便利であるからこそせっかくの恩恵を無駄にせんと一念発起して昨年から「この時期聴いた新譜を紹介する」というテーマで毎月noteを書き始めて今も続けている。進研ゼミの勧誘漫画の主人公並みに何をやっても続かない僕だったが、あくまで自主的に行っている形式的なコンテンツで初志貫徹中なのはこれが初めてだと思う。
サブスクで聴きこむ
⇒どうしても手元に置きたくなる
⇒CDかレコードを買う
という流れはいつからか定着し、地元の石丸電気(当時新潟駅前では最大の品ぞろえだった)へ毎日のように通っていた高校時代から考えると信じられないような時代が到来した。
サブスクがなかったらとっくに新しい音楽聴いていないと思うんだよな…それくらい僕の脳みそは少し前まで凝り固まっていたし「NO MUSIC, NO LIFE」という言葉に対して懐疑的に捻くれて生きてきた。そしてそれは今も現在進行形で拗れに拗れている…そんなifを反芻したりしなかったりする近年、改めてロックを中心に色々と音楽を聴く中で特筆して魅力を感じるのがこのBig Thiefだった。
先月発売したBig Thiefのアルバム
で、
急に話は変わるが先日法事があった。
年明けしてほどなく逝去した祖母の
「四十九日の法要」
コロナ禍も考慮してこの日は親戚を多く呼ぶこともなく自宅で法要を済ませる段取りとなった。近い親等の家族だけで実家に集まって読経を聴き、独特のリズムに気持ちを乗せながら世話になった祖母を悼む時間を過ごさせていただいた。
そんな法事の前日のこと、
そこに現在は都内に住む妹が帰省して参加してくれることに…世の中が慌ただしい中休みをとって帰省してくれるという。とはいえ色々あって両親も家に帰れないとう僕が駅まで迎えにいくことになり、2月後半といえどいまだ肌寒い新潟へと久々に足を運んだ妹を迎え、そそくさと家まで送り届けることとなった。
なんだかんだ慌ただしい中であったので、ついぞ会話とは呼べないくらいの絶妙なやりとりしかその時点ではしておらず、夕食もまだということで家に残っていた料理を温めて妹にふるまい、少し落ち着いたタイミングでやっと会話と呼べる会話をすることになった。そこで妹はこう切り出した
妹「てかBig Thiefの新譜聴いた?」
僕「もちろん…やっべえよな。あれ…」
僕と妹はそのやりとりを終えるとお互い湯呑に入ったほうじ茶をぐいっと飲んで喉を湿らせた。
僕はもともと自発的にロックを聴き始め、それを見た父親からレコードコレクションを丸々受け継いだりと経緯があったが、妹は妹で10年ほど前から毎年自費でフジロックにソロで通しで参加するという強者で、しばらくの間金銭的にフジロックへ行くこともかなわなかった僕は妹から現場の熱量をおすそ分けしてもらったりしていたものだ。
サブスクで音楽を聴くようになってからはたまに新譜を勧めたりすることもあり、とはいえここでBig Thiefの話をするとはついぞ思わなかった。
ここまであたり前のように連呼してきたが、
一応軽く説明するとBig Thiefとは
2015年にアメリカはブルックリンで結成された女性ボーカルのインディロックバンド。90年代USインディロックの美味しいところをしっかり継承したスタイルが音楽好きを魅了し、2019年にはイギリスの知る人ぞ知るレーベル『4AD』へ移籍。USインディからさらに飛躍したアレンジの作品を連続リリースし、その年のグラミー賞にもノミネートされたことでバンドの名を一気に知らしめることとなった。
少し後追いではあったが僕はこのバンドが大好きで、新譜は2枚組20曲1時間20分とちょっと尻込みしてしまうくらいの大作ではあるが、古き良きアメリカを思わせるフォークロックを軸にRadioheadやCocteau Twinsを思わせるような斬新な楽曲までをとことん良質なサウンドアレンジで「古臭いのに生々しく」練りこまれており、聴けば聴くほど素晴らしいアルバムだった。
父親から受け継いだレコードの中からニールヤングのAfter the Gold Rushを聴いて衝撃を受けた時を思い出しつつ、また新しい出会いがそこにはあった。
法事の前日なぜか妹と共鳴したこの作品への感想、なんとなく心に残ってレコード盤を買ったのかは僕の深層心理にあって自分でもわかり得ない部分だが、アルバム一曲目の『Change』でも歌われている
永遠に生きるつもり?
死ぬこともなく
周りのものは全て移ろいゆくのに
というフレーズがなんともタイムリーに響いて図らずも「時間」についてなんともゆっくりと考える機会となった。
機会があったら是非聴いてみてほしいバンド。
Big Thief