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Written by原田 透子
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金カム展に、いってきた!

金カム展に、いってきた!

金カム展に、いってきた!

 

※ この記事は漫画『ゴールデンカムイ』の公式展示会であるゴールデンカムイ展のネタバレを含みます。

 

 

 

 

全てはここから始まったわけだが。

出典:フォロワーさんのツイート
(著作権の関係により画像にはぼかしを入れています。当該ツイートをしたアカウントは鍵がかかっており、拡散能力はありません)

 

正直、ゴールデンカムイについては名前や物語の噂を聞きかじった程度の知識しかなく、わたしのなかでは『ゴツくて死んだ目の男たちがお宝さがしをしている明治版ワン〇ース』くらいの印象だった。

 

方々での評判を耳にしながらなんとなく読む機会がないままでいて、周囲からおすすめされていたものの既刊29冊ともなるとなおさら足が遠のく。

 

そんなときに目にしたのがフォロワーさんのこのツイートだった。

 

いやシンプルに気になりすぎる。

ていうかなんならもう、そうにしか見えなくなってきた。

 

しかもなんとも都合のよいことに、このときゴールデンカムイは絶賛全話無料公開中だったのだ。

 

蓋を開いてみれば、あと2、3話で連載が終了し、8年弱の作品の歴史に幕が下ろされるというまさにクライマックスの真っただ中。

そんなときに第一話から最終回までを無料公開って、太っ腹どころかちょっと頭がどうかしているとしか思えない。

 

「え?今からでも入れる保険があるんですか?」

みたいな気持ちで、わたしはありがたく無料公開の恩恵にあずかったわけだ。

 

 

ところで沼というのは、きらめく湖のような相貌でそこにある。

ふむ、水でも飲もうかな、なんてふうに覗き込んだときにはすでに手遅れで、気づくとすでにまあまあの量の泥をすすっていることになるのだ。

 

なるのだ、ではない。

 

 

ともかくわたしは、多くの人々が長い年月をかけて喜怒哀楽を共にしてきた作品をわずかひと晩と少しで駆け抜けてしまった。情緒は犠牲になったものの、そんなものはどうだっていい。

好きなだけくれてやる。

 

ていうかすッッッごく面白かったんだけども。

なんでもっと早く教えてくれなかったの???

集英社生まれ週刊少年ジャンプ育ちの28歳に刺さらないわけがないんですよ。

 

友情・努力・勝利。

ちょっと血生臭さが目立ちますけど、まあそこはヤンジャンですからね。

おとなの友情・努力・勝利、ということにしましょう。

 

いまだかつてこんなに不純な動機で漫画を読んだことはなかったが、結果オーライどころの騒ぎではない。こんなものを無料で読んだままおれるはずはなく、普通にコミックスにお金を落とすことにさせていただいた。

ポチー、チャリンチャリン。

 

ちなみにきっかけになった親分と姫のシーンは、フォロワーさんのキャスティングのままかなり鮮明に脳内再生されてしまい、お二人の演技力が高すぎるあまり普通に泣いてしまった。たぶん泣くところではない。ケツの皮剥ぐし。

 

 

で、だ。

そんなゴールデンカムイ、漫画の完結を記念して公式展示会『ゴールデンカムイ展』を開催するのだと。

 

なんて都合のいいタイミング(その2)。

これはもしかしなくても、まちがいなく、そういう誘導なんだろう。

何たる強気と自信だろう。けれどそれに足りうる作品であるし、ホイホイ餌食になっている人間が確かにここにいる。ホイホイ。

 

ええいここまできたらあんたらの策略に一から十まで乗ったるわい。

というきもちで、とりあえず2回行ってきた。

▲ゴールデンカムイにおいてなくてはならない存在であるヒグマ。でかい。

アシ(リ)パが身にまとっているアイヌの衣類テタラペのモデル。刺繍が美しい。

鶴見中尉の肋骨服の資料。これまた装飾が洒落ている。

 

す、スゲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?

 

わたしが想像していた『漫画作品の展示会』とはまるで違う。

展示室は6つのゾーンに分かれており、キャラクターや物語になぞらえながら資料や現行の展示と、解説がされている。

資料として使用されたであろう品物の数々が惜しげもなく展示され、小さいスペースながらもその様態はさながら博物館だ。

 

アイヌ民族の被服や道具、大日本帝国陸軍の軍服やなんかは、実物を目にする機会などそうない。

 

しかしアイヌ民族の用品は、衣料品から道具にいたるまで様々な文様が施されていて本当にオシャレ。

狩猟民族である彼らが日常的に携帯していたとされる小刀「マキリ」には、鞘と持ち手に彫刻がしてあるのだけれど、これがびっくりするほど繊細なのだ。

展示してあるものは、作者が資料用に製作してもらったものなんだそうが、実際にこれらをずっとずっと昔の時代からひとの手が掘っていたんだから、そのデザイン力と技量に驚かされる。

 

うーん、こういうものを見るとよりウポポイ(北海道にあるアイヌの言語や文化の興進、復興のための民族共生象徴空間)に行ってみたくなるなあ。

 

さらに歴史や文化についても作品に沿った解説がされていて、フィクションである漫画を通して現実にあるものへと知見を広げる架け橋にもなっている、学術的な要素も持った実に斬新な展示会だった。

▲作中で尾形が使用する三八式歩兵銃。尾形……(泣)

キ(ロ)ランケのマキリ。なんて繊細な彫刻か。これを絵に描き起こす野田先生もすごい。

 

もちろん、厳選されたシーンの原稿、カラーイラストの展示も豊富。

怒涛のクライマックスシーンは、結末を知ってもなお鳥肌がおさえられない迫力で、複製といえど原稿を前にするとやっぱりこみ上げるものがあった。

大人だからガマンしたけど18歳とかだったら人目もはばからず泣いちゃっていたかもしれない。

オタクは感極まりがちなのだ。

▲全裸でカメラ目線キメがち

▲カラーイラストがまとめられたゾーンは圧巻

 

既刊に掲載されている部分までは展示品含めすべて撮影可能で、わたしもバシバシ写真に収めてきた。

まあ公式図録にすべて収録されているんだけど。

 

この図録の厚みよ。

美術館の特別展示会並みのボリュームだ。

持った感じの重さもなかなかで、この1冊でゴールデンカムイ展を何度も反芻できるだけでなく、なんとスケベな袋とじ付きときている。

商売上手が過ぎるでしょうが。

 

という具合に、疾風怒濤のゴールデンカムイブームを迎えたわたしは、乗るっきゃないこのビッグウェーブに、を地で行ってみたわけだ。

全てが強大な勢力の陰謀(言い方)というのは分かり切ったうえでなお、この展示会へ足を運んだ経験は大きかった。

 

世の中では作品内でのセンシティブな内容の扱われ方に賛否両論あるが、先述した通りより造詣を深めるための架け橋であるとわたしは感じる。

フィクションの先に足を踏み込んで、学術的知識を得るかどうかはそのひと次第なところはあれ、娯楽のひとつである「漫画」がこれほどまでに知的探求心をくすぐるのはひとえに、作品そのものの絶対的な面白さによるところが大きいだろう。

 

だって、面白いな、好きだな、って思ったものはもっと詳しく知りたくなるでしょ。

そのきっかけの第一歩として、この斬新な展示会は非常によく機能していると思う。

 

なるほど策士だと思うのは、この催しを原作の完結とともに開始したことだ。

日付が最終回の発表日と重なったのは偶然らしいが、完結記念として行われたこの展覧会は、作品に対する「ロス」の気持ちを逆手に取り、アイヌについてや戦争について学ぶことでさらに作品との距離が近づけるよ、ということを教えてくれている。

 

わたしなんかは寂しがり屋なので、好きな作品の終わりはめでたさより悲しさが勝ってしまうタイプだけれど、こういう人間にとって現実社会に通ずる、あるいは存在するものがあると嬉しくてたまらないし、作品に関連した物事に対する学びはおはなしの奥行きを確かめるようでとても楽しい。

 

ゴールデンカムイには、

「ああ楽しかった」

で終わらせないぞという、愛とパワーがめっちゃある。

そういうエネルギーを、作品からも、それに追随するあらゆるコンテンツからも、ビシバシ感じる。

 

すべてではなくとも誰かが、失われつつある文化や、この国に持つ凄惨な負の歴史を人々が知り、考え、行動していくためのトリガーになりうる可能性を、きちんと視野に入れていることがわかる、そうあってほしいという願いが伝わってくる、熱意溢れる展示会だった。

 

わたしたちいちファンができることは、その祈りの片棒を担ぐことでしょうな。

▲へえ…かわいいね

 

なお会期は以下の日程。

興味のある方はぜひ公式サイトを覗いてみてくださいネ。

 

東京会場:東京ドームシティ Gallery Aamo

2022年4月28日(木)~6月26日(日)

 

京都会場:京都文化博物館

2022年7月9日(土)~9月11日(日)

 

福岡会場:福岡アジア美術館 企画ギャラリーA・B・C

2022年10月15日(土)~11月27日(日)

原田 透子

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