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Written by佐藤 徹平(satch)
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レンタルビデオ慕情

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中学生の頃、映画好きの親戚の伯母と一緒に映画館に足を運び、ショーン・コネリーとニコラス・ケイジ主演の映画「ザ・ロック」を鑑賞した。

 

断崖の孤島にある脱獄不可能とされたアルカトラズ刑務所跡にテロリスト集団が立てこもり、ニコラス扮する若いエージェントが、かつて史上唯一アルカトラズからの脱出に成功したとされる老兵とともに犯罪者たちへ立ち向かうストーリーのアクション映画だ。

 

映画館を出るやいなや、伯母は早口でショーン・コネリーが007シリーズの初代ジェームズ・ボンド役を演じていたことや、ニコラス・ケイジが映画監督のフランシス・F・コッポラの甥であることを教えてくれた。

 

伯母の運転する車で映画館のある市街地から自宅へ戻る道すがら、伯母は「せっかくだからショーン・コネリーの出ている映画を借りてから帰ろう」と、レンタルビデオ店へと寄り道してくれた。

 

 

 

 

僕は映画を観るのが好きだ。

 

といっても、月に何度も映画館に通って、最新の公開作品をチェックするわけではない。

 

「映画を観る」というライフスタイルは、映画館or自宅で観るという二択に分けられると思うのだが、僕は自宅で観るほうを好む。

 

配信サービスは利用せず、いまだに「レンタルビデオショップ」に通っている。

 

店内に所狭しと並ぶ膨大な量のDVD/ブルー・レイの中から、その時の気分に合った作品を見つけ出し、自宅でゆっくりと鑑賞するのが良いのだ。

 

部屋で鑑賞するのは映画館の大音響と大きなスクリーンで観るのとは趣が異なるものの、疲れたら好きなタイミングで席をたって飲み物を取りに行っても良いし、トイレに行きたくなったら一時停止することもできる。気に入った作品であれば、繰り返し観たっていい。

 

 

サブスクリプションサービスが充実した現代において、レンタルビデオ店に通うというこの行動はいささかナンセンスだと感じるものの、映画を選んで自宅のプレイヤーにセットし、鑑賞する一連の流れの中「レンタルビデオショップに足を運ぶ」というアクションが含まれるだけで、なぜだかわからないが作品への気持ちの向き方がより真摯になるような気がする。

 

 

 

僕が思春期の真っただ中だった90年代の終わりから2,000年初頭のことだが、レンタルビデオ店は、様々なカルチャーの発信基地だった。その代表格と言えばやはりTSUTAYAだろう。僕の家の近所や通学路にあった店舗は書籍やCDの販売コーナーが併設されていた。

音楽と映画、ファッションに夢中だった僕は毎日のように足を運んでは店頭に並ぶ商品を眺め、その物量、情報量に圧倒されたものだ。

 

店頭で求人募集の張り紙を見たぼくはすぐさま電話番号をメモし、応募した。学生時代のほとんどをTSUTAYAでのアルバイトにあてた僕は、卒業後もそのまま社員として勤める道を選ぶことになる。社員としてTSUTAYAではおよそ10年ほど勤務したのだが、そこでは多くのことを学ばせてもらった。

 

 

ご存じの方も多いだろうが、TSUTAYAはフランチャイズ事業である。直営店と呼ばれる大本のフランチャイズ本部が運営する店舗は店舗数全体の1割程度で、ほとんどの店舗はフランチャイズ加盟をした別のオーナー企業が存在し、店舗を展開している。

 

オーナー企業の方針によるのだが、お店ごとに品揃えが異なっていたり、独自の企画が垣間見えたりするのはそのためである。

 

僕の在籍していた店舗もフランチャイズ加盟店舗だったため、独自の企画を展開したりしたものだ。

 

地方のローカルFM局とのコラボと称して、毎週ラジオに出演したり、地元で活動するインディーバンドやミュージシャンのCDを直接仕入れて店頭に並べるといった企画を実施したりしたのだが、今となってはそれらがとても懐かしく思える。

 

 

そんなTSUTAYAも最近では閉店が相次ぎ、巷では閉店ラッシュなどと報じられているのも珍しくない。僕の勤めていた期間には全国に1,400店舗ほど営業していたのだが、2022年では1,000店舗まで減少しているらしい。

 

 

それは言うまでもなく、サブスクリプションサービスの充実に起因したライフスタイルの変化が要因なのだろう。

 

 

情報の発信と教授が容易となった現代においては、書籍などの媒体も含め、パッケージ商品でカルチャーを手に取ることの喜びが希薄になっているのも事実であると思う。

 

 

いつか、街からレンタルビデオショップが消えてしまう日が来るかもしれないと思うと、少し悲しい。

 

話を冒頭に戻すと、僕が映画に触れる手段としてレンタルビデオを選ぶのは、伯母と一緒にレンタルビデオ店へと立ち寄った思い出が多分に影響しているからだ。

もちろんTSUTAYAでの勤務経験と、かつて利用客として感じた文化に触れる高揚感によるところもある。

 

カルチャーを手軽に摂取できる経験。

 

 

TSUTAYAでの勤務時代にも、これを思い出させてくれることがあった。

 

ある日、テレビでSF映画「猿の惑星」のリメイクが放送された時のこと。

一組の親子連れが、店頭に立って作業をしていた僕に話しかけてくれた。

 

「古い猿の惑星のDVDはありますか?」

 

テレビで放送された作品を観た後に、もともとのオリジナル作品にも興味がわいたようで、是非とも観てみたくなったそうだ。

 

店内のSF映画のコーナーに案内し、作品のパッケージを手渡すと、一緒にいたお子様が「早く見たい」と、大変喜んだ様子で、それに向けて親御さんが「とても怖い映画だよ」と笑顔で語りかけていた。

 

作品を観たお子様はどんな感想を持っただろうか……。

 

レンタルビデオ店で映画に触れたこの体験は、この少年のカルチャー経験にどんな影響を与えたのだろうか……。

 

映画に触れる手段はひとによってさまざまだ。

 

自宅にいながら好みの作品に触れることができる便利な世の中ではあるが、こんな風に作品パッケージを手に取る体験が付加されると、それはより一層記憶に刻まれる思い出になることだろう。

 

 

僕は映画が見たくなったら、近所のレンタルビデオ店へ足を運び、じっくりと棚を眺めて作品を選ぶようにしている。

 

自分が“手に取って選んだ”作品をゆっくり楽しむという体験が、いつだって僕にとっては必要な事だから。

 

 

■TSUTAYA

■ザ・ロック

■猿の惑星

■ショーン・コネリー

■ニコラス・ケイジ

佐藤 徹平(satch)

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